第2章 デッキを組むときの基本 

 

0.確率の考え方


これから、デッキを組むときの基本的な考えを解説する。

わーい。やっとデッキが組める。

いや、組まないが・・・組むのは自分で好きなときにやってくれ。ここでは解説しかしない。

なーんだ。がっくり。

さらにがっくりさせることに、今回は数式も使う。

数学嫌い・・・

数学というレベルまでつっこんだ話はしないよ。中学レベルで十分わかるように解説するつもりだ。言い方を変えるなら算数でも良いが。いや、さすがに算数よりは難しいか。

数学嫌い・・・

 

1.カードを引いてくる確率


いきなり確率ですか! もろに数学じゃないですか!

そういきりたつな。お前が数学苦手なように、俺も英語が苦手だ。

まったく関係ないじゃないですか。 しかもマジックは英語をたくさん使ってるのに、それじゃ説得力無いですよ。

MTGで使ってる英語なんて英語とは言わないよ。必要な「用語」としてあるだけだ。実際にはあんなの通じない。話をもとに戻すぞ〜。

ううっ。数学嫌い・・・

構わず進めることにする。デッキを組むときには最低60枚で、基本地形をのぞく同じ名前のカードは4枚までという話は初心者入門書でしたと思うが、覚えているか?

覚えてますよ。

じゃ、いきなり計算だ。1000枚のデッキに4枚入っているカードと、60枚のデッキに4枚入っているカード、どちらが引きやすい?

そんなの60枚の方に決まってるじゃないですか。

そうだな。なんだ、数学できるじゃないか。

こんなの数学じゃないですよ。

そうか、これからでてくるのはこれをちょっと難しくした程度だから、安心しろ。

そうなんですか? よかった〜。

厳密に確率計算しようとすると、数列とか組み合わせの数とか、高校数学使うからな。

1−(5660

とか書いても意味が分からなかったりするだろうし。ちなみにこれは60枚デッキで4枚入っているカードが最初の7枚の中に最低1枚は持っている確率だ。約0.4つまり40%になる。

(ぷしゅーっ)

うーん、やはりはじけたか(笑) ということで、厳密な計算はあまり意味がないので、「期待値」を使って計算する。こっちは簡単だぞ。

期待値=引いた枚数*入れた枚数/デッキ枚数

とりあえず数を入れた方がわかりやすいかもな。デッキ枚数が60枚、入れた枚数が4枚。引いた枚数が最初の7枚だとすると、

期待値=7*4/60=0.4666666・・・

となって、だいたい46%の確率で初期手札に最低1枚持っているという期待がもてるわけだ。どうだ。これなら簡単だろ?

(ぷしゅーっ)

だめだこりゃ。

 

2.土地の枚数は?


さて、続けて計算で行くぞ〜

もう勘弁してくださいよ。

何を言うか。このくらいの計算は基本だよ、基本。
ところで、デッキを組む上で絶対に必要なのは何だ?

えーと、呪文ですか?

はずれ。正解は「土地」だよ。土地が無いとマナがでない。マナがないと呪文が使えない。と、こういうわけだ。だから、絶対に土地が必要だ。

そうですね。

だが、土地だけあってもどうしようもない。土地からでるマナを他のリソースに変換するために、呪文も必要だ。

それはそうですね。

そして、ある程度ゲームが進んで必要な枚数の土地が手に入った後は、土地は不要のカードになる。最序盤は他のどのカードよりも欲しい「土地」が、時間がたつにつれて、その価値が激減してくる。土地は鮮度が命なんだな。

魚じゃないんだから。

序盤に困らないようにたくさんの土地をデッキに入れるとしよう。そうすると確かに序盤のマナに困らない。しかし時間とともに呪文が不足してくる。結局、呪文の使った枚数が相手の方が多く、そのせいで負けてしまった。
そこで土地を減らしてみる。すると今度は序盤に必要なマナがそろわなくて相手に殴られ放題になってしまった。必要な分の土地が手に入ったときには既に負けていた。

どっちも嫌です。

そこで、必要なマナが必要なときに手にはいるようにデッキの中の土地の枚数を調節することが大切なんだ。本当は手札を整理するカードとか、特殊地形とか使うと効果的なんだが、今回はそれは省く。

説明しないんですか?

ヒマが有ればさらりと説明しても良いが、とりあえず今は省略する。「デッキに何枚の土地を入れますか?」という問題の簡単化のためにもその辺を考慮するのは最後にするよ。

わかりました。

そこで、やっぱり計算だ。

やっぱりですか〜?(涙)

がんばれ。この辺はデッキ構築の根底に根ざすものだ。どんなデッキを作るときにも避けて通れないぞ。

ううっ。

で、計算式だが、さっきの式をそのまま使ってしまえばいい。

期待値=引いた枚数*入れた枚数/デッキ枚数

とりあえず、3ターン目までに3枚の土地が欲しいとしようか。ということは先攻なら2回のドローと合わせて引いた数が9枚、入れた枚数が知りたいからここを □ にでもしておく。デッキ枚数はもちろん60枚だ。すると、

3=9*□/60

ということだな。後は□を求めれば必要な枚数がでる。こんな計算、小学4年生でも出来る。

(ぷしゅーっ)

こんなので溶けるなよ・・・。ちなみに□の値は20だ。

つまり20枚土地を入れれば3ターン目に土地が3枚置けるってことですね?

そうだけど、これはあくまで期待値だからな。つまり50%の確率だ。土地が1枚しか引けないとか、5枚も引いたとかいう事だってあるわけだから、絶対ではないぞ。安心は出来ないが期待は出来る、そういったレベルの話だ。

 

3.他のカードの枚数は?


土地の枚数がわかったら今度は他のカードの枚数をどうするかと言う話だ。

好きなの入れればいいじゃないですか。

それでもいい。しかしそれは今回の「勝つために強いデッキを」というテーマには反する。ということで、ここで説明するのは「マナカーブ」という概念だ。

マナカーブ?

さらりと重要なことを言うが、いくら強いカードでも、使えなければその価値は0だ。リソースを広げるどころか、手札にとどまっている分だけ相手に手札1枚分のアドバンテージを取られてしまう。

そうなりますね。

そして、強いカードはたいていマナがたくさんかかる。そして、土地は1ターンに1枚しか置けない。これがどういうことかわかるか?

強いカードは最初は使えないということですか?

そういうことだ。重要なのは「使うことの出来ないカードはただの紙」ということだ。たとえば6マナ以上の呪文だけでデッキを組んだとする。もちろん6ターン目までに6マナ欲しいから、60枚のデッキに土地を30枚もぶち込んだ。するとどうなる?

1ターンに土地が1枚しか置けないから、5ターン目まで何も出来ません。

その通り。土地が6つ並ぶまで手札の呪文カードの価値は全て0だ。おそらく6マナそろって呪文を使い始めてもそのまま負けるだろう。

<ラノワールのエルフ>や<極楽鳥>を使って早い段階でたくさんマナを出せるようにしたらどうですかね。

それは有効な手段だ。それならスピードも付くし、強力なデッキが出来るかもしれない。実際その手のタイプのデッキもある。しかし、今回はその手のマナを加速する手段、「マナブースト」って言うんだが、それを考えないことにする。

また簡単のためですか?

そうだ。その方が説明しやすいからな。それにマナブーストを用いていても、それはこれからの説明の延長でしかないから、同じ事だ。「マナカーブの重要性」の話だな。

計算はなさそうですね。

何言ってる。これは緻密な計算に基づいて定義された重要性だぞ。計算抜きに話は出来ない。

やっぱり?

当然だ。で、話を元に戻すが、土地は1ターンに1枚しか置けない。ということは1ターン目に1マナの呪文、2ターン目に2マナの呪文、3ターン目に3マナの呪文・・・という風に展開していけば、「マナ」というリソースを有効に使えると思わないか?

それはそうですね。

そこで、1ターン目に土地1枚と1マナの呪文1枚。2ターン目に土地がさらに1枚と2マナの呪文1枚か1マナの呪文2枚、3ターン目にはさらにもう1枚の土地と、3マナか、2マナと1マナか、1マナ3枚の呪文があることが理想になる。

ふんふん。

そこで、マナコストの小さいカードから大きなカードまでピラミッド状にデッキに入れるんだ。このとき、かかるマナコストとその枚数の関係がカーブを描くからマナカーブと呼ばれるんだ。

で、計算はどこですか?

そんなに計算したいならさせてやるぞ。このマナカーブにそって、何マナのコストのカードを何枚入れるか、それを計算するんだ。さぁやれ。

ボク、また溶けますよ?

こらこら。しかたないから俺がやるが、ちゃんと自分でもできるようにならないとあとあと困るぞ?とりあえず期待値式と、その結果を載せておく。

期待値=引いた枚数*入れた枚数/デッキ枚数

 1マナ: 1 = 7*□/60  □=8.666・・・
 2マナ: 1 = 8*□/60  □=7.5
 3マナ: 1 = 9*□/60  □=6.666・・・
 4マナ: 1 =10*□/60  □=6.0

60枚デッキで入れる土地を24枚にするとだいたい4ターン目まで土地が出せるから、それで考えてみた。

1マナ:12枚 2マナ:10枚 3マナ:8枚
4マナ以上:6枚

これでちょうど60枚だ。ひねりも何もないが、結構うまくいくと思う。後は自分で調節してくれ。

 

4.デッキのバランス改善


今までは基本的にデッキに入れたカード枚数に全てを賭けて話をしてきた。が、これではあまりにも大雑把だ。もう少し何とかしたい。

何とか出来るんですか?

もちろんなんとでも出来る。そのための手札交換やドローを操作するカードがある。マナカーブに柔軟性を持たせるためにマナブースト手段を使うのもデッキのバランスを改善する良い方法だ。

なるほど。

もしも手札の不要カードを有効なカードにしてくれる呪文があるならそれは手札のアドバンテージを与えてくれるカードということだ。もう必要のない土地を有効な呪文に変えるなら、土地枚数のバランス調節も楽になる。後半になって引いてきた小さなクリーチャーをもっと有効な大型クリーチャーや呪文に変化させるなら、マナカーブの改善も楽々だ。

そうですね。

その手の効果を持っているのがドロー操作や手札整理と呼ばれるタイプのカードだ。たいてい青の呪文だけどな。たとえば<夢での蓄え>というカードがある。

@カード解説
 <夢での蓄え> 青2 ソーサリー
  カードを3枚引く。その後手札から2枚選んで
  ライブラリーの上か下に置く。

このとき、不要になった手札の土地カード2枚をライブラリーの下に入れてやれば、<夢での蓄え>の分も合わせて最高で3枚の有効カードが手にはいることになる。手札のアドバンテージ獲得だ。
もう一つ例をあげるか。<ラノワールのエルフ>というカードがある。

@カード解説
 <ラノワールのエルフ> 緑 1/1
  T:緑マナを1つ生み出す

このとき、<エルフ>の生み出す1マナを呪文を使うために使ってしまうのか、それとも<エルフ>を攻撃やブロックにつかうのか選ぶことができる。マナカーブに柔軟性がでるというわけだな。この手のカードを入れることで土地の枚数も少なくできるかもしれないし、その分アドバンテージがとれるかもしれないな。

 

4.カード1枚の価値


とまぁ、ここまでいろいろ計算してきたが、わかったか?

こんな計算しなくても大丈夫じゃないですか?だいたいの枚数でデッキ組んだって、たいして変わらないでしょ?

だ〜か〜ら〜、それだと強くならないんだよ。デッキの1枚のカードを入れ替えただけで勝率はがらりと変わるんだからな。

え? たった1枚でですか?

やっぱりわかってなかったか。たとえば、まったく同じデッキで、まったく互角の技術をもつ2人が対戦した場合、どうなる?

互角なんですから、引き分けると思います。

あ、まぁ、そういう答えもありだが・・・。とりあえず交互に勝ったり負けたりして、その勝率は50%だということにしようか。

はい。

ここで、片方のデッキに1枚だけ「引けば勝つ」というカードを入れたとしよう。決着が付くのはだいたい17ターン目。お互いに8枚ドローして結果として最高で15枚の手札を使うことにする。

はいはい。

そうすると、その「引けば勝つ」カードを入れた方が4回に1回無条件で勝ち始める。

それは・・・そうですね。60枚デッキで15枚引くんですから。

そうすると勝率はどうなる?

えーと・・・

4回に1回、つまり25%は片方が必ず勝つから、残りの75%を痛み分けする事になる。つまり「引けば勝つ」方は勝率が62.5%にまで上昇するんだ。だいたい3回に2回くらい勝つ。

・・・1枚でですか?

その通り。もしも4枚その「引けば勝つ」カードに入れかえたら勝率は約98%になる。もちろんそんな「引けば勝つ」というカードはないが、状況次第によってはそれに匹敵する強さを発揮するカードもある事は確かだしな。
・・・1枚のカードの価値がわかったか?

よくわかりました。

 

追記事項:8月25日


指摘があったんだが、今はオプショナルマリガンのルールがある。ということは「引けば勝つ」カードが手札に無いときはマリガンするという方法をとれば勝率は格段に上がるらしい。確かにその通りだ。

でも1枚少なくなりますよ?

手札が少なくなった時の勝率の減少は考えに入れていないそうだ。しかし、オプショナルマリガンというルールは「1枚のカードの価値」を高めるルールだと思って間違いないだろうな。もちろん、手札を減らすことで「引けば勝つ」カードを引かなかったときの勝率は下がるけどな。

そもそも「引けば勝つ」カードなんて無いでしょう?

さっきも言ったが、状況次第でそれに匹敵する強さを持つカードもあるんだよ。問題はマリガンして減った手札でその状況を作り出せるか、ということだが。手札が少なくなればなるほど難しくなるだろうな。「引けば勝つ」じゃなく、「引けば80%勝つ」くらいのカードに成り下がるかもしれん。

それでも強いですが・・・。

ま、世の中にはそんなカードもあるということだ。だからこそカード1枚をおろそかにしてはいけないわけだな。