完敗だった。
相手のスピードにまったくついていけない。
自分の呪文書の動きが遅いものであることは十分にわかっていたつもりだったが、どうやらまだまだ認識が甘かったようである。
少年が使った呪符とカルマが使った呪符の数。それだけ比べてみても圧倒的な差であった。比べることもばかばかしい。
そこでカルマは少年に断ってメインの呪文書の構成の変更を申し出た。
普通、決闘というのは2本先取した方が勝者となる。
そして1戦ごとに15枚の予備の呪文書から呪符を取り出し、メインの呪文書と入れ替えることができるようになっているのだ。
しかし今回カルマが申し出たのはそうではない。
メインの呪文書の構成そのものを少し手直しさせてほしいと、そう言ったのである。
本来なら決闘中に呪文書を再構築する様なことはしない。できない。
しかしこのまま対戦をしていても同じように展開し、同じように負けてしまう可能性が大きかった。
それでは、せっかく対戦を持ちかけてくれたこの少年にも申し訳ない──。
相手があってこその決闘なのである。
自分の自尊心など守っている場合ではなかった。
幸いなことに少年はカルマの申し出を快く承諾してくれた。
「あ、でもボクの色が緑だってわかったからって、それ用の対策カードは入れないで下さいね?」
少年の色は緑、そしてカルマの色は青と黒である。
緑と青、そして緑と黒は敵対している色であり、そのために、色を狙い打ちにした対策カードも数多く存在する。少年が心配するのも無理はなかった。
しかしカルマは持ってきた予備の呪文書とメインの呪文書の呪符を交換しつつ、
「もちろん、入れないですよ。意味がないですから」
と言ってみせる。
もちろん真剣な決闘ともなれば、色を狙い打ちにする対策カードをも盛り込んだ予備の呪文書を用いるだろうが、今回は勝つためにやっているのではない。呪文書を試してみたくてやっているのだ。
対策カードを入れた方が勝ちやすくなるのは当然であるが、そういったものを入れて、もし勝ったとしても意味がないといった理由はそこにある。
幸いなことに少年が使っている呪文書は弱いわけではないが、一流といわれる呪文書ほどに手も足も出なくなるというほどではないだろう。カルマにとってはちょうど良いといえば言える相手なのである。
それに緑には緑の弱点もある。
上手くそこをつければ・・・。
メインの呪文書の構成を思案するあまり、カルマは最後に見た森ではない土地についての注意を怠っていた。
それは青を使う者にとって、ときに致命的とも言えるもので、決闘の最中では無いにしろ、これはカルマの2つ目のミスだった。
| カルマ |
手札7枚 |
ライフ20 |
| 無し |
| 少年 |
手札7枚 |
ライフ20 |
| 無し |
「古の盟約に従い、先攻で行きます」
「どうぞ」
2人とも7枚の呪符を手に取り、マリガンが無いことを宣言すると、カルマは先攻をとった。
今回の手札は・・・何とか戦えそうである。
少なくてもさっきのように為すすべもなくやられる・・・それはさけられそうな手札だった。
「沼気よどむ沼よ、我が下に」
そして
「我、汝を強迫せん!」
流れるように呪符を使っていく。
最初の手札に島もあったが、相手の手を見ておくことで、どれを打ち消しどれを無視するべきなのか、それを見極めるために初手に強迫を打ち込むことは決して悪くない。カルマはそう考えていた。
少年がまだ何も使うことの許されていなかったその手札を悔しそうにさらけ出す。
森、山、ティタニアの僧侶、ティタニアに選ばれし者、激励、怨恨、そして、よりよい品物。
この中でカルマの青と黒で場に出たときに対策できない、そして致命的な呪符、よりよい品物が少年の手札の中に含まれていた。
「これを、お願いします」
「ちぇ〜」
言うまでもなく、よりよい品物を捨ててもらった。
怨恨もかなりいやらしいが今回は何とかなる呪符が手の中にある。無視してもいい。
ここでカルマはまたしてもその存在を見落とした。
緑単色に含まれるはずのない、決定的呪符。<山>である。
あまりに基本的な呪符であるため、先ほどの決闘で場に出たとき、捨てられたとき、そして今手札で見たときの3度に渡ってその存在を軽視もしくは無視してしまっていた。
| カルマ |
手札5枚 |
ライフ20 |
| 沼 |
| 少年 |
手札7枚 |
ライフ20 |
| 無し |
少年のターン。
1枚呪符をめくった後、場に森を出して終了。
手札の中身がわかっているカルマにとって、当然こうなることは予想していたが、今引いた呪符がラノワールのエルフではないことは予想がつく。もしそうならためらい無く場に出しているだろうからだ。
では、一体何を引いたのか。
強迫を打ち込んで手札を確認したとはいえ、かいま見た未来は時が経つほどに揺らいでいくのだ。
| カルマ |
手札5枚 |
ライフ20 |
| 沼 |
| 少年 |
手札6枚 |
ライフ20 |
| 森 |
沼からのマナを回復させた後、呪文書から1枚呪符を得ると、島に支配を伸ばす。
そして、できるだけ未来が予想の中にあるうちに形を決めておこうと、さらに行動を起こした。
「沼よ、我に黒きマナを。 そして、我は重ねる<暗黒の儀式>!」
<暗黒の儀式>
一瞬だけであるが爆発的に黒マナを生み出す呪符である。
呪符一枚とマナの交換。
長期的に見れば何度も使える沼の方が100倍ましだが、短い時間で決着を付けるために、いくつもの呪符をいっぺんに使うときや、大呪文を使うときの起爆剤にしたりと、その用途は広く、創世記から現在にいたるまで黒の力を特徴づけてきた黒の基本とも言える呪符である。その使い方を間違わなければ強力な力を生み出す源にもなる呪符であった。
事実、この呪符と他のマナ加速手段によって対戦相手を一瞬のうちに死に至らしめる呪文書が数多く作られるたため、一部の盟約上では使用禁止にもなっているほどだ。
とにかく、カルマは生み出された黒マナと、そして島からの青マナを用い、普段では早い時間で使うことのできないはずの呪符を使うことができるようになったのである。
「氷河の時代から生き残りし、心惑わす力秘めたる<深淵の死霊>よ!」
黒い影がカルマの前に現れる。
やせた漆黒の体、長く細い耳、細すぎるつり上がった目、赤いくちばし。
異様に長い腕を広げればその間に現れる黒い大きな皮膜。
アルフレッドと同様の姿を持つ魔法生物(クリーチャー)をカルマは呼び出した。
が、その顔に人をあざけるような笑みはない。
主人の命令に忠実に従う、ただの魔法生物である。
それが少し寂しかったが、カルマにとって頼りになる戦力で有ることに間違いはなかった。
| カルマ |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 沼、島、死霊 |
| 少年 |
手札6枚 |
ライフ20 |
| 森 |
少年はじっと死霊を見つめていた。その顔はかなり厳しい。
緑は飛行するクリーチャーに対して弱いという側面がある。
もちろん緑ならではの飛行対策の呪符がいくつもあるが、少年の呪文書を予想するにあたり、その数は多いとは思えなかった。
しかもあの表情からするともしかしたら呪文書の中には入っていないのかもしれない。
少なくとも手札に持っているとは思えなかった。
呪符から新しい1枚を得たあと、山に支配を伸ばし、そこから<ティタニアの僧侶>を呼び出した。
場に出ているエルフの数と同じだけ緑のマナを生み出せるこのクリーチャーは、自身もエルフであるために最低限1つの緑マナを生み出す。そしてラノワールのエルフやティタニアの選ばれし者といった他のエルフが場に出ると、その生み出すマナも比例して増えていくのだ。
しかし今は場に出たばかりでマナを生み出すことはできない。しかも場にいるエルフは僧侶だけである。今なら1マナしか生み出さない。
もちろん、次からはどうなるかわからないが。
| カルマ |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 沼、島、死霊 |
| 少年 |
手札5枚 |
ライフ20 |
| 森、山、僧侶 |
沼と島からのマナが回復する。呪符を1枚得た後、さらに島に支配を伸ばした。
少年が嫌な顔をする。
当然だ。これで<対抗呪文>が使えるマナがそろったのである。
さっきの決闘と同じ構成の3マナだが、今回はさっきとは違う。
カルマの場には死霊がいるし、少年の場には僧侶ただ一人だ。場の優位はカルマが持っている。
こうなったときの青は、強い。
一度場の優位を得てしまえば後は打ち消し呪文を使っているだけで勝ててしまうのだ。
もちろん、カルマの呪文書の中にそんなにたくさんの打ち消し呪文が入っているわけではないが、死霊の力によって呪符を削り取られてしまえば、その分打ち消さなければならない呪符の数も減少する。
「行け、深淵の死霊よ」
少年の場には死霊を止めるだけの手だてがない。悠々と飛行して少年にその爪を立て、心の一部を削り取る。
墓地には<激励>の呪符が落ちた。
これで少年の手札は残り4枚。強迫でのぞき見てわかっている呪符はティタニアの選ばれし者と怨恨。残り2枚がわからない。
未来が揺らいできていた。
| カルマ |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 沼、島、島、死霊 |
| 少年 |
手札4枚 |
ライフ18 |
| 森、山、僧侶 |
森、山、僧侶の力を回復させると、少年はさらに1枚呪符を得る。
そして引いたとたんにその呪符を場に出した。森である。
これで実質4マナ。持っていないとは思いたいが、よりよい品物も使えるマナの量である。
しかし少年はカルマの場をじっと見つめた。
島が2つ、そのマナをたたえたまま静かにたたずんでいる。
この状態で自分のキーとなる呪符を使う気には、普通なれない。
対抗呪文などの打ち消し呪文が有るからだ。
それが青の望むところなのだが、先ほどの決闘ではそれでも少年は手札を使ってきていた。
今とさっきでは場の状況が違う。
打ち消し呪文を使う青の魔法使いにとって有利な場と多い手札、そして多量のマナを得ることは勝ちに等しい。
今回は有利な場が打ち消し呪文の効果を高める結果となっていた。
そのうち死霊が多い手札を、時間が多量のマナをもたらしてくれるだろう。
決心が付いたのか、少年は呪符を使い始めた。
「ティタニアの選ばれし者──いいですか?」
「どうぞ」
「なら、ティタニアの僧侶」
「通します」
カルマはそのどちらも打ち消すことはしなかった。
これによって選ばれし者は1つパワーアップし、また、僧侶から生み出されるマナも膨大なものとなったが、この状況でクリーチャーを打ち消している場合ではない。致命的な呪符が出てくるまで我慢の一手である。
それにカルマの手にある1枚の呪符がクリーチャーは打ち消さなくても良いと、そういっていた。
| カルマ |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 沼、島、島、死霊 |
| 少年 |
手札2枚 |
ライフ18 |
| 森、森、山、僧侶、僧侶、選ばれし者(+1UP) |
ここまでで少年は手札を2枚まで減らしていた。死霊が攻撃すると、1枚になる。
対してカルマは今回新たに得た呪符で合計4枚。相手より多い手札という項目はクリアできそうだった。
「水の流れに浮かぶ島よ、さらに集え」
3つ目の島を支配する。
これで打ち消し呪文が2ついっぺんに使える。それだけのマナは確保された。
さらにカルマは深淵の死霊で少年の心を削る。
墓地に落ちたのは、ラノワールのエルフ。
残りの手札は、怨恨。
もう強迫の見せた未来はほぼ見えなくなっており、逆に時間が経った今はカルマが思い描いていたものと酷似した現実が広がっていた。
これから先は少年の呪符の引きが現実を変える力を持つのだ。
| カルマ |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 沼、島、島、島、死霊 |
| 少年 |
手札1枚 |
ライフ16 |
| 森、森、山、僧侶、僧侶、選ばれし者(+1UP) |
少年が期待を込めて呪文書をめくる。
それはカルマにはわからない呪符だ。一体何を引いたのか──。
しかしその答えはすぐにわかった。
僧侶と森、山からマナを引き出し、その多量のマナで恐るべき魔法生物を呼びだしたのである。
「地に倒れたときは知恵となって手に戻る、力有る巨木 <ウェザーシード・ツリーフォーク>」
愕然。
今ここでこれを持ってくるとは・・・
今カルマの手にある打ち消し呪文は<誤算>。2点のマナを強要するだけでは少年はたとえマナバーンをするとしてもためらい無くそれを払うだろう。
「誤算を、、、サイクリングです」
あの巨木を見逃すわけには行かない。何せ一度場に出てしまえば倒したと思っても呪符となり、再び場に戻ってくる力を持っているのである。どうしても打ち消さないわけにはいかなかった。
対応して誤算をサイクリングして持ってきた呪符は・・・。対抗呪文ではなかった。
「通りました」
苦虫をかみつぶすようにな思いで、しかし表情は冷静に、呪文の完成を了承する。
少年の顔に笑みが浮かんだ。
「それでは、さらに!」
打ち消し呪文が無いと判ってか、少年は残り1枚の手札、怨恨も使う。
対象は、もちろんティタニアに選ばれし者。
成功すると、ツリーフォークの分とあわせて3つ分パワーアップするそれは、怨恨の力をあわせるとたった今召還したばかりのツリーフォークの力をもしのぐほどの強さになる。
「それは、、、ダメです」
ツリーフォークもいる。しかし、こちらも見逃すわけには行かない。そこまでやられてしまってはこの決闘までも負けてしまう。
時が来るまでと握り続けたその呪符を、自ら多量の血を流し、使う。
「我、ここに血を捧げ、その力の源とす。命有るものよ。我は、其を奪いし者。再び立ち上がること能わず。汝<殺し>を受けたと知るべし」
ティタニアの選ばれし者が、突然その命の火を消し、大地に倒れる。
怨恨までもが行き場を失って主人の手に戻ることなく墓地へ落ちていった。
諸同盟の時代からマナ必要とせずに使うことのできる呪符が発見されていた。
しかし時が経つにつれ、現代の盟約では使うことができなくなり、しばらくはマナだけがそのエネルギー源だったのである。
しかし最近、再びマナ不要呪文(ピッチスペル)が相次いで発見された。
今回カルマが使用した<殺し>もその内の1つである。
自らが沼を支配している場合、本来のマナを支払うことなくその力をふるうことができる。
その代わりとして初期生命力の2割程度が必要となるが、時と場合によってそれは安い代償であることも多い。
それに、何も必ずそうしなければならないというわけではない。
マナに余裕がないとき、どうしても必要ならそうすることができるというだけであり、言うならば行動の選択肢が増えているというだけである。
さっきとは逆に今度は悔しそうな表情を浮かべ、少年は選ばれし者と怨恨と墓地へと送った。
「仕方ない。ティタニアの僧侶だけで攻撃します」
少年の手札は0。
何かを隠し持つことはできない。それならばと、攻撃に送り出してきた。
いさぎよし。
さっきの決闘でラノワールのエルフを攻撃させなかったのと同じミスを、今度は犯さなかった様である。
| カルマ |
手札2枚 |
ライフ15 |
| 沼、島、島、島、死霊 |
| 少年 |
手札0枚 |
ライフ16 |
| 森、森、山、僧侶、僧侶、ツリーフォーク |
今回のドローでカルマの手札は3枚。少年の手札は0。
これ以降、深淵の死霊が少年の手札を破壊しようとしても、少年は引いた片端から使ってしまい、死霊が手札を破壊するという効果は意味が無くなる。
つまり深淵の死霊はただの中型の飛行クリーチャーに成り下がってしまったわけである。
と、言いたいところだが・・・。
ここからがこの怪物の本領発揮となるようにカルマは呪文書を構成していた。
「深淵の死霊よ、その身に<錬金術の研究>を纏え」
特定の対象1つに向かってごく小さな魔力弾をとばす力を与える、魔法生物魔力賦与呪文(エンチャント・クリーチャー呪文)である。
そのダメージは0ではないが最小のものである。
しかし、それで十分。
この死霊の放った魔力弾は心を惑わす力をもち、手札を攻める。
カルマは残ったマナを使って<波止場の用心棒>も召還する。
手札を1枚消費するが、場に出ているクリーチャーをその所有者の手札に返す力を発揮するクリーチャーであり、汎用性はかなり高い。一度召還酔いからさめてしまえばこれを除去することはそれほど容易ではない。
| カルマ |
手札1枚 |
ライフ15 |
| 沼、島、島、島、死霊(研究)、用心棒 |
| 少年 |
手札0枚 |
ライフ16 |
| 森、森、山、僧侶、僧侶、ツリーフォーク |
少年が呪符を得る。
「そこです」
すかさず、深淵の死霊から魔力弾が飛ぶ。
少年に少しの衝撃を与えたそれはしかし、その手から今得たばかりの呪符をこぼれさせた。
少年が得た呪符の片端から、使う機会も与えず削り取っていくこと。それがいまこの死霊に与えられた役目だった。
こぼれ落ちた呪符は<怨恨>
使うことも許されず墓地に落ち、再び少年の手札は0になる。
「全軍、攻撃!」
手札がない、しかも引いても使うことを許されないこの状態では、もはや望みの綱は場にいるこいつらしかいない。それは少年もわかっている。だから、後ろを見ない全軍突撃なのだ。
カルマの場には用心棒がいる。僧侶とならば相打ちに持ち込める。
しかし、当然無視である。
2体の僧侶と巨大なツリーフォークが横を通り過ぎる中、波止場の用心棒は一歩も動かず、じっと自分の役目を果たす時を待っていた。
カルマの残り生命力の半分ほどが持って行かれる。苦しい。
しかし、もう少しで何とかなるはずだった。
| カルマ |
手札1枚 |
ライフ08 |
| 沼、島、島、島、死霊(研究)、用心棒 |
| 少年 |
手札0枚 |
ライフ15 |
| 森、森、山、僧侶、僧侶、ツリーフォーク |
ドローをする。
カルマはほっと息をついた。どうやら間に合ったようである。
「波止場の用心棒よ、ツリーフォークを戻せ」
手札から沼を捨てる。用心棒がその力を発揮させ、恐るべき力を持つその巨木を少年の手へと押し返した。
「深淵の死霊よ、かの呪符を削り取ってこい!」
攻撃を命ずる。
ザクッ
その爪が少年の体に食い込む。手に戻されたばかりのツリーフォークは再び場に出ることを許される機会がないまま、墓地へと落ちていった。
これで、場にいるのはカルマの方に錬金術の研究を付けた深淵の死霊と波止場の用心棒。少年の方にティタニアの僧侶が2体。場の優位はある。後は少年の手札を攻めつつ、確実に進めて行くだけで勝てるという状況だった。
ここで、気がゆるむ。
| カルマ |
手札1枚 |
ライフ08 |
| 沼、島、島、島、死霊(研究)、用心棒 |
| 少年 |
手札0枚 |
ライフ13 |
| 森、森、山、僧侶、僧侶 |
少年はおそらくラストチャンスとなるドローに、力を込めていた。
深淵の死霊が力を使ってしまっている今しか、チャンスはない。これからは長引けば長引くほど勝ちから遠ざかるのは少年にもよくわかっていることだろう。
だから、この一瞬、この1枚のドローに今、全ての期待を込めたのだ。
「ひけっ」
少年の引いた呪符は・・・。
僧侶2体と、山からマナが引き出される。
「全てを焼き尽くす<猛火>よ、死霊を焼け!」
まったく、何という引きか・・・。
これが若い力というものなのか。
カルマは山の存在を完全に無視していた。少年の呪文書は緑単色だと信じて疑わなかったのである。
そんなわけはないのだ。たとえありふれた山とはいえ呪文書の中の立派な1枚である。無視して良いわけはなかった。
そんなカルマの慢心が招いたのか、この極限状態で少年の願いは天に届いた。
このとき、カルマの手に残った最後の1枚は<対抗呪文>であった。
しかし、カルマはあえてそれを使わなかった。
ほぼ手中にしていた勝利を逃すのもかまわず、信じられないといった風に目を見開いて深淵の死霊を墓地へと送ったのである。
この後は、もはや想像がつくだろう。
波止場の用心棒がいるとはいえ、使うわけにいかない対抗呪文を握りしめ、およそ3ターンの後、僧侶が巨大化したところでカルマは投了を宣言した。