| 少年 |
手札7枚 |
ライフ20 |
| 無し |
| カルマ |
手札7枚 |
ライフ20 |
| 無し |
「えーっと、<森>を出して」
少年が手札の1枚を使い、森へと支配を伸ばす。
どんな呪文もマナがなければそれを使うことができない。
通常、最初は土地へと支配を伸ばしてマナ源を確保、そこから生み出されるマナを用いてクリーチャーを召還したり、アーティファクトやエンチャントを作り出したり、インスタントやソーサリーを使ったりしていく。
「来い、<ラノワールのエルフ>」
少年は支配した森から生み出される緑マナを用いて、その身に森と同等の力を宿すエルフを呼び出す。
ラノワールのエルフは緑のマナを生み出す力を持っているのである。
緑の初手としては悪くないスタートだ。
| 少年 |
手札5枚 |
ライフ20 |
| 森、ラノ |
| カルマ |
手札7枚 |
ライフ20 |
| 無し |
アンタップ、アップキープ・・・無し、ドロー・・・
何度もやってきたその動作が、しかし今は緊張のために少しぎこちない。
少年には気づかれていないが、指も少しふるえている。
──まったく。対戦初心者じゃないんだぞ。
悟られないようにできるだけゆったりと余裕のあるように見せかけて1つ1つ行動していく。
「沼気よどむ<沼>よ、我が元に」
すかさず生み出した黒マナから呪文を唱える。
「我、汝を<強迫>せん!」
<強迫>
相手の手札を盗み見て、その中から土地でもクリーチャーでも無い呪文を1つ捨てさせる呪文。
手札破壊としてはこちらが1枚であちらも1枚という、いわゆるカードアドバンテージはとれないのだが、初手に使う事ができるマナコストでの効果としては破格だと考えられている。
それに、相手の手札を見て捨てさせるカードを選べるところも大きい。
自分と相手の手札の全て、そして場のカードをあわせると、ここから数ターンの間の動きを予想することも容易なのである。つまりそれは未来をかいま見ることにも等しいとカルマは考えていた。
少年の手札をのぞき込む。
森・ティタニアの僧侶・ティタニアに選ばれし者・怨恨・巨大化。
「それでは、これを捨てていただきましょう」
「やっぱり」
少年が見た目にもわかるほどがっかりする。
カルマが指定したのは、もちろん<怨恨>
いつまでも場に残り続けるこの魔力賦与呪文(エンチャント呪文)は、はっきり言ってかなりいやらしい。
事実上、全てのクリーチャーがその分だけパワーアップすることにも等しいからだ。
これを除去する方法も無いわけではないが、捨てさせることができる呪符は他には巨大化しかなかった。
どちらが強いかと聞かれれば何とも言えないが、多くの人は何度も使える<怨恨>をより高く評価しており、カルマもその内の一人だったのである。
| 少年 |
手札4枚 |
ライフ20 |
| 森、ラノ |
| カルマ |
手札6枚 |
ライフ20 |
| 沼 |
「もう一枚森を出して・・・」
1枚ドローしたあと、少年は新たにもう1枚の森を自分の支配下に入れる。
ラノワールのエルフと併せてこれでいきなり3マナが使えるわけだ。
とするとここで出てくるのは──。
既に相手の手札を見て知っているカルマには次に使うであろう呪符の見当を付けるのは造作もない。
出てきたのは<ティタニアの選ばれし者>
最初はパワーもタフネスも最弱レベルのクリーチャーだが、いずれかのプレイヤーが緑の呪文を1つプレイするたび毎に少しずつ強くなっていくという力を持っている。
今回の少年のように緑単色──もしくはそれに近い──呪文書である時には恐るべき早さで成長する可能性もある。
カルマの目から見える少年の手札の中身はティタニアの僧侶と巨大化。残り1枚はわからない。
次の少年のドローと併せて最大で一気に4点分パワーアップという可能性もあるのである。
少し急がなければならないようだった。
| 少年 |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 森、森、ラノ、選ばれし者 |
| カルマ |
手札6枚 |
ライフ20 |
| 沼 |
「水の流れに浮かぶ<島>よ、我が下に」
沼からのマナを回復させ、今度は島に支配を伸ばす。
しかしここで使える呪符は残念ながらカルマの手札には無かった。
「エンド」
できるだけ平静を装って終了を宣言する。
少年は少しだけ眉をひそめた。
| 少年 |
手札3枚 |
ライフ20 |
| 森、森、ラノ、選ばれし者 |
| カルマ |
手札6枚 |
ライフ20 |
| 沼、島 |
「もう一枚森を出して・・・」
森とエルフからのマナを回復させ、呪文書から新しい1ページを手に入れた後、少年はもう一つ森を支配下に入れた。もはや間違いない。少年の呪文書は少なくてもその大部分が緑。他の色は入っていてもサポートする程度の枚数だろう。
相手の呪文書の構成を予想することは、青を使う、つまりは打ち消し呪文を使うカルマにとって、必須といえる項目の内の1つである。
少年もそれがわかっているのか、カルマの顔をちらりと見る。
島と、それとそこから使われる打ち消し呪文を警戒したためだろう。
今はまだ島が2つそろっていないが、だからといって打ち消し呪文が使えないわけではない。
多色でも使えるように青マナ依存が1つだけという打ち消し呪文も中にはあり、多色デッキで打ち消し呪文を加えようとするならその代表といえる<対抗呪文>よりも先に選択肢に上ることも有るほどなのである。
その場合に警戒する代表的なものは<誤算>と<魔力消沈>の2種類。
どちらも余分なマナの支払いを要求するもので、それが払えない場合や、もしくは払わないとした場合、呪文がうち消される。
今、カルマの場に残っているマナ源は沼と島。誤算も魔力消沈も使えるが、誤算で2マナ、魔力消沈に至っては1マナの支払いを強要する程度でしかない。
いや、もう一つ警戒すべき打ち消し呪文があった。<無効>だ。
これは青マナ1つだけでアーティファクトかエンチャントを1つうち消すというものだ。
これらの内のどれかを、もしくは全部を警戒して手を遅くすること。それは青にとって好都合という状態である。実際、カルマはそれを願っていた。カルマの手札にあったうち消し呪文は<対抗呪文>なのだ(!)
しかし、少年は心を決めたように顔を上げると、呪文を使い始めたのである。
「怨恨を、ティタニアの選ばれし者に付けます。・・・いいですか?」
「!! ・・・どうぞ」
「じゃぁ、続けてティタニアの僧侶を場に出します。・・・いいですか?」
「・・・・・・どうぞ」
これでティタニアの選ばれし者は2つパワーアップ。おまけにさっき強迫で捨てさせたはずの怨恨までついて、今やそのパワーは十分すぎるほどであった。
「ティタニアの選ばれし者で攻撃します」
何を警戒してか、ラノワールのエルフは攻撃に来なかった。手札に残っている1枚は巨大化だと知られているのにも関わらず、である。
しかし選ばれし者1体だけでもカルマの生命力の4分の1を削り取るパワーを持っていた。十分な強さである。
「あ、エルフも攻撃した方が良かったのかな。まぁいいや、終わりです」
このプレイは甘いといわざるを得ない。
しかしそれでもなおカルマが今の状況をひっくり返すにはいたらないであろう。
少し急ぐくらいでは足りなかったのである。
| 少年 |
手札1枚 |
ライフ20 |
| 森、森、森、ラノ、僧侶、選ばれし者(怨恨、+2UP) |
| カルマ |
手札6枚 |
ライフ15 |
| 沼、島 |
「水の流れに浮かぶ島よ。さらに集え」
これで沼が1つに島が2つ。<対抗呪文>を使うことも可能なマナになった。
しかし、ここで必要なことは<対抗呪文>でうち消すことではない。
ティタニアの選ばれし者をどうにかしないことにはすぐにでも負けてしまうのである。
その思いのせいか、ここで致命的なミスをする。
「その身に起きあがる力宿らせし<カブトガニ>よ」
マナを使い切ってのブロッククリーチャー召還。青にとって致命的とも言えるこの手を打たせたのは何が原因だったのか。
いや、相手の手札が巨大化1枚とわかっているのだから、相手の次のドローが良くないことを願って、このプレイングが正しいのかもしれない。しかし、結果は最悪の事態を招いた。
| 少年 |
手札1枚 |
ライフ20 |
| 森、森、森、ラノ、僧侶、選ばれし者(怨恨、+2UP) |
| カルマ |
手札5枚 |
ライフ15 |
| 沼、島、島、カニ |
呪文書から新しいページをめくったとたん、少年はカルマの場を、特に島を確認した。
その動作はたぶん、誰もが無意識にしてしまうことであり、そして少年もその例に漏れなかった訳である。
つまり、絶対にうち消されたくない呪符を手に入れた──。
それはおそらく、これからカルマがどうあがいても負けが確定する、致命的な呪符だろう。
同時に、カルマはそれを感じていた。
「行きます」
少年は少し嬉々としてその呪文を唱える。
「力有るもの、其を知恵と変えよ。捧げるはその命。全ての力、ここに<よりよい品物>となって帰らん」
ティタニアの僧侶とラノワールのエルフから生み出された緑のマナが少年の呪符の中で力となっていく。
そして呪文が完成すると少年の周りにその力が満たされた。
<よりよい品物>
クリーチャー1体を生け贄に捧げることで、そのパワーの分だけ呪符を引き、そして手札から3枚を捨てるという全体魔力賦与呪文である。
少年のようにパワーの大きなクリーチャーを擁する場合、もしくはパワーが大きくなるような仕掛けを作ってある場合、それを生け贄に捧げることによって新たに膨大な呪符を得ることができる。
つまり、カードアドバンテージの獲得だ。
手札破壊とカウンターで相手を封じ込めるタイプのカルマの呪文書にとって、相手にカードを引かれてしまう呪符というのは絶対に見逃すことができない、絶対打ち消さなければならないものである。
手の中に打ち消し呪文はあった。それを使うだけのマナも出せた。
しかし今だけはそれを使ってしまっていた。
「ティタニアに選ばれし者で攻撃します」
よりよい品物のせいでもう一段階パワーアップした選ばれし者をカルマはあえてカニでブロックしなかった。
少年はさらに巨大化まで使い、ティタニアの選ばれし者をパワーアップ。
カルマの残り生命力の3分の2を奪った。圧倒的なパワーだった。
さらに少年はその選ばれし者をよりよい品物の生け贄に捧げ、10枚もの呪符を得る。
森・山・よりよい品物を捨てた後、新たに山を場に出す。もう1体のティタニアの選ばれし者を場に出して終了を宣言した。
次のターンのカルマのドローは、皮肉にも今回の呪文書のキーカードだった。
しかし今はまったくその効果を発揮できないばかりか、逆に足を引っ張ってしまう。
手札と場を少し見つめた後、カルマは投了を宣言した。