場面を戻そう。
場所はじだらく。そのカウンターの前。
どうやらリュークはオーディアからの言いがかり攻撃から逃れたようで、座敷の方でぐったりと横になっている。頭の上に置かれているおしぼりは、その横で飲んでいる他の従業員からのせめてもの心遣い…と言うものだろうか。
その一方、オーディアはというと、カウンターに腰掛けたまま、コップになみなみと注がれた酒を、こぼさないように注意しながら口を付けているところだった。カウンターの向こうで包丁を振るっているゲンさんにつまみを注文し、出てきていたお通しに箸を付ける。
「…、…、…、…くはーーっ。おいし〜、ゲンさん。もう一杯頂戴っ」
「あいよ」
カウンターの下から一升瓶を取り出すと、コップの縁ぎりぎりまで注がれる。酒がこぼれてしまったときのためか、コップの下には受け皿が引いてある。
「よぉ」
そのオーディアの横に立ち、アルフレッドは気軽に声をかけた。
「面白ェもん見せてもらったぜ。いつもあんな感じなのか?」
「……あんた誰?」
口の端からイカの足をはみ出させながら、オーディアはアルフレッドの方を振り返った。
「おいおい」
「…………?」
オーディアはじ〜〜っと顔を近づけて、アルフレッドを見た。
「ああ、あんた。今日遅くに着いた…え〜っと…アルファベットだっけ?」
「アルフレッドだよっ!」
「ごめんごめん。部屋に眼鏡忘れて来ちゃったから良く見えないのよ」
悪びれた風もなく、口の中の物と一緒にまた一口酒を飲む。
「ったく。客の名前も覚えねぇのかよ」
「あら、今は勤務時間外。ここにいるのは受付のオーディアじゃないのよ?」
「それでも客の前じゃそれなりの顔するのが普通ってもんだろうだよ」
「普通って何よ。余計なお世話。あたしはこれが普通よ。それよりもアンタこそ、綺麗な顔してる割にはすっごく口がわるいのねぇ」
「けっ、それこそ余計なお世話だぜ」
そう言うと、アルフレッドはオーディアの隣にどかっと座り、カウンターにひじをついて相手の顔を眺めた。それに気にした様子もなく、オーディアは左手に持ったコップの残りをくいっとあおる。
「〜〜♪」
「……へぇ」
「……なによ」
「いや、別に?」
「変な人ね。あ、ゲンさん、もう一杯おかわり」
オーディアがコップを差し出すと、ゲンさんはまた一升瓶を取り出す。だが、それを傾けるのが少しだけ止まる。
「お嬢、飲みが早過ぎやしないかい?」
「だからぁ…その呼び方はやめてってば」
「そうはいかねえ。あっしの中ではお嬢はいつまでだってお嬢だ」
「まったくもう…」
困った顔をしながら、やはりそう呼び呼ばれる仲にまんざらでも無い感じだ。
なるほど、あたりを見回せば目に入るのは男ばかり。紅一点、と言うことになれば多少の気遣いが増えるのは当然と言えば言えるかも知れない。
「それよりも、本当に大丈夫ですかぃ?」
「大丈夫よ。今日は気分がいいの」
「そういって次の日いつも必ず頭が痛いって言うじゃないですか」
「ま、それはそれこれはこれよ。ね?」
「……」
「ゲンさん〜?」
「へぇへぇわかりやした。…お嬢にはかなわねぇやね」
トクトクトク…
「へへへっ だからゲンさん好きよ」
再び傾けられた一升瓶から透明な液体が注がれていく。オーディアは早速口を付けた。
「〜〜〜♪」
そのやりとりをアルフレッドは興味なさそうに一瞥を加えただけでオーディアの顔に視線を戻した。それに気が付いたオーディアはコップから口をはなさずに目だけ横に向ける。
「アンタもお酒くらい飲めば?」
「あん?」
「アタシの顔見てたって面白くないでしょ?」
「そうでもないぜ?」
「へえ。 何が面白いのか、教えてもらいたいところだわ」
「…いやに旨そうに飲むからよ」
「?」
「ただ、飲むたびににやけたツラになるのは注意した方が良いと思うぜ?」
「……あたしそんな顔してた?」
「ああ、してたしてた。これ以上ないくらい幸せそうに飲んでたぜぇ?」
「!」
照れ隠しのためかまたグラスに口を付ける。
「…ふふふ♪」
「ほら、また。」
「うるさいわねぇ…。好きなんだから仕方ないでしょ。それよりもアンタも飲んだらどうなのよ」
いつまでも自分の顔を見られているのが落ち着かなくなっているのだろうか。それとも、酒を勧めることで相手にも同じことを言い返してやろうかと考えているのかも知れない。
「あ、俺は酒はいいや」
その申し出をアルフレッドは片手を振って断った。
「え? 飲まないの? ……ひょっとして下戸なのかしらぁ?」
早速弱点を見つけたと思ったか、にやりと片目をつり上げた。
「そうじゃねぇよ…飲んでも酔えネェの」
「酔えないくらい何よ。その分たくさん飲めていいじゃない」
「酒は旨くねぇんだよ…」
「旨くない?」
「甘くねぇからな」
「……ぷっ」
甘くないから。
そう聞いた瞬間、オーディアは何かに憑かれたように笑い出した。
「あははははは。あんた、お酒で酔えないのはいいとしても、甘くないからってのは…くくくく」
横を向いて笑いをこらえていたがどうにもガマンできないらしい。
「あは…あはははは。子供みたーい。ぜんぜん顔に似合ってないわよっ」
アルフレッドの背中をばんばんとたたきながら、それでも笑い続けている。
「けっ。いってやがれ」
ふてくされたように顔を逸らす。
「ああ、ごめんごめん。じゃ、お酒じゃなくてもいいからさ、何か飲みなさいよ。笑ったお詫びに一杯だけ、おごらせてもらうわ」
あいた手で首に手を回し、片目をつぶって笑いかける。
「ほほぉ〜う? なんでもか?」
「女に二言は無いわよ」
「それじゃぁ、ガムシロでももらうか」
「へ?」
「ガムシッロップだよ。しらねぇのか」
「あの甘い?」
「おぅよ」
「ぷっ…」
もう止まらない。じだらくにオーディアの笑い声が響き渡っていた。
「おい、いい加減にしねぇと笑い死ぬぞ」
「くくくくっ おかし…だめ…誰か止めて…ぷくっ…くくくっ」
カウンターに顔をつけ、お腹を抱えながらオーディアは体をよじって笑っていた。
「まぁまぁ、お嬢。世の中にはそんな人も居るかも知れネェ。笑っちゃ悪いですぜ」
「そんなこと言ってもっ くくっ くくく…」
「それにアンタもアンタだ。ここは居酒屋だ。飲めねえと言わず、きゅっと一杯やってみちゃどうだい。あっしからもおごるぜ?」
そういって奥の棚から一本、ラベルの破ってない大瓶を取り出した。
「これはあっし自慢の酒でね」
「あ、それ…」
何か知っているのだろう。だが、言いかけてやめる。
「なんだよ」
「何でもないわ。ね、あれにしなさいよ。絶対おいしいからっ」
「そうそう」
まだ、うんとは言っていないのに、コップにそれこそあふれるほどに注がれる。
「はいよっ。ぐいーーっと一杯、一気にやってくんな」
カウンターに出されたコップを前に、オーディアとゲンさんの興味津々の視線を受けて、アルフレッドは眉根を寄せた。
「何かあるだろ」
『なんにもない(わよ)(ですぜ)』
「ハモるほど何かあるってことだよな…」
明らかに何かありそうなそれを、だが、アルフレッドは一気に煽った。
「あっ!」
オーディアが驚きの声を上げる。
「……」
「……」
「……」
「……だ…大丈夫?」
「……」
「……」
「……何だ。ただの水か」
『えっ!?』
期待していた答えはそれではない…裏切られたショックで二人は同時に驚きの声を上げた。
「なんてな。……ヤロウ、やっぱりなんかあったんじゃネェか。こんな強ェ酒出しやがって」
「……ホントに大丈夫なの?」
「だから言ってるだろうがよ。俺は酔えネェんだってよ」
「それ…火…付くのよ?」
「ま、口当たりは良かったな。さすが自慢の酒だ。もう一杯くれ」
オーディアを無視し、呆然としているゲンさんにコップを差し出す。
「あ…おぅ…」
とくとくとく…
受け皿を下に置き、アルフレッドはオーディアの前に酒を置いた。
「?」
「俺からの奢りだ」
「なっ!?」
「何だ、飲まネェのか?
「火が付くほど強いって言ってるでしょう」
「めちゃめちゃ美味ェのによぉ…」
つい…と、皿ごと引き寄せると目の前のコップをつかみ、のどの奥に一気に流し込んだ
「…、…、…、ふぅ。とまぁ、こんなもんだぜ」
「…すげぇ人がいたもんだ」
瓶を持ったままやはり呆然としたままゲンさんがつぶやく。
「まぁな。ちょっと間違ってるが誉め言葉として受け取っておくぜ」
「?」
人じゃネェよ…とは言えない。
「ま、これで飲み比べは俺の勝ちってことだよな。キシシシ」
「は?…いつそういうことになったのよっ」
「なに言ってやがる。人生はいつでも勝負だぜぇ?」
「……わけわかんないわ、アンタ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃネェか。そんなに誉めるな」
誉めたつもりはまったく無いオーディアだった。
カウンターのイスに座り直し、オーディアは酒を飲み直していた。アルフレッドはその横で出されたつまみをいくつかつまみ食いしている。
「ま、これで俺の1勝0敗だな」
「あたしは勝負してないって言ってるでしょ。それに本当に酔えないなんてインチキじゃないの」
4杯目になるそれをちびりちびりとやりながら、オーディアはさっきのことに対して反論していた。
「そんなの最初から話にならないわよ」
「そうかぁ? まぁ俺はなにやっても負けねぇけどよ」
「へぇ…」
キシシシと、猫のように目を細め独特の笑い方をするアルフ。
「アンタ、そんなに強いんだ」
「さぁて、それはどうかねぇ? まぁ、酔っぱらいには負けねぇと思うぜ?」
「へぇぇ… じゃぁあたしと勝負してみなさいよ」
「なんだ、やるってのか。いいぜ? だけど飲み比べならごめんだぜ? 俺はもうのめねぇ〜」
「くっ…」
肩をすくめて両手を開く。顔には余裕の表情が浮かんでいるが、それがオーディアの感情を撫でた。
「これで勝負よ」
胸の内ポケットから小さなカード入れを取り出した。
「呪符かぁ? いいぜいいぜぇ。 じゃぁそうだなぁ…3本のうち一本でもとったらお前の勝ちってことでいいぜ?」
「なに言ってんのよ、バカにしないで。あたしはこれでもちょっとは腕が立つんだからね」
「ほぉぅ? じゃぁ2本取られたら負けを認めてやるよ」
「3本ともで結構よ」
コップの酒をのどの奥に押し込む。
「そっちこそバカにすんな。酔っぱらいごときにゃ負けねぇよ」
「あたしは酔ってないわよっ」
たんっ とカウンターにコップを打ち付ける。頬に朱がさしていた。
「キシシシ。じゃぁ何か賭けでもするか?」
「賭け?」
「おう。負けた方は一晩、勝った方の言うことを何でも聞くってのはどうよ?」
「なっ…なにバカなこといってんのよ」
「何だなんだぁ? 腕が立つって言ってたのはやっぱ嘘か」
「嘘じゃないわよ」
「そんなに自信あるならどんな条件でもOKだろうがよ?」
勝負と聞いて、いつものアルフレッドに戻りつつある。常に相手を嘲る態度をとる、あのいやらしい、そして飄々とした強さを持つ、あのアルフレッドである。オーディアは既に術中にはまりつつあった。
「自信がねぇなら仕方ネェな、五分の条件でもいいぜぇ?」
「わかったわよ…」
「聞こえネェよ」
「わかったって言ってんの! その条件でいいわよっ!」
「キシシシ。交渉成立だ」
同時に二人は席を立つ。
「ゲンさん、お勘定はあとでね。それと、ウナギお願い!」
「おいおい、ウナギ食うなら元もと勘定はあとじゃネェのか?」
「う…」
正鵠を射られ、その場に固まるオーディア。
「まぁまぁ、そういじめねぇで下さいよ。お嬢、山椒は?」
「いるわけないでしょ!」
怒鳴りつけて、奥の部屋に入っていく。
ぽりぽりと後ろ頭をかきながらアルフレッドもその後ろを追った。
「アンタ」
「ん?」
包丁を振るいながら、ゲンさんがアルフレッドを呼び止める。
「……ちっとは手加減してやってくださいよ」
「何のことだ?」
「アンタは強い。そう思っただけですよ」
「……」
「違いますか?」
「さぁてね?」
視線を逸らしながらつまらなそうに肩をすくめる。
「何せ世界は広いからよ」
「違い無いですな。ですが…」
そこで言いよどむ。何を言いたいのか、アルフレッドにはわかっていた。
「なにしてるのよっ 早くきなさいよ」
「へぇへぇ…つーわけだからよ」
後ろ手に手を振って奥の方に向かって歩き出す。
「からかうのも、程々にしておいてやるよ」
その声を聞いて、ゲンさんはまた包丁を振るい始めた。
じだらくの部屋の奥にあったもう一つの部屋の中に入り込み、オーディアはアルフレッドを手招きした。
部屋に入ったのを確認すると、扉を閉める、
「すぐ着くから、おとなしくしてなさいよ」
ドアの脇に立ち、ボタンを押す。カクンっと振動がした後に部屋の中に違和感が襲った。
「また妙な仕掛けがしてあんのか? ご苦労なことだぜ」
ほんの十数秒ののち、またカクンと振動がして、違和感が止まる。
「着いたわよ。出て」
扉を開けて外へと促す。ドアが開くと白い道が一本続いていた。おとなしく部屋から出て、オーディアの後について歩いていく。
その向こうから二人、こちらへ向かってくるのが見えた。
「お。カルマじゃねぇか」
「あれ? アルフ?」
「よっ!」
片手を上げて挨拶する。
「奇遇だな」
「こんなところでなにしてるんだよ」
「そりゃこっちの台詞だぜ」
ぐいっと首に腕を回して引き込むと、ぼそぼそとしゃべりはじめた。
「どうだ? 上手くいったか?」
「……」
「なんだよ、ダメだったのか? だから言っただろうがよ。あの呪文書は弱えってよぉ」
「大きなお世話だよ。それにどうしてそんなこと知ってるんだ」
「あれだけ必死に呪文書練ってたんだ、わかんねえ方がどうかしてるぜ」
「そりゃそうだけど。 …そうだ、アルフ! お前俺の呪文書いじっただろ!」
言うと同時に巻き付いていた腕から逃れる。
「あん? なんだよ。役に立たなかったか?」
「そりゃ役には立ったけど、そういう問題じゃないだろ」
「なにアンタ、そんなコトしてるわけ? 最低ね」
その横でジェネシスもうんうんとうなずいている。
「ほらな、みんなそういうだろ」
「お前のためを思ってやったんだけどなぁ」
「それでもだよ。こういうことはもうやめてくれ」
「へぇへぇ」
本当に聞いているのかわからなかったが、カルマはこれ以上この話題を続けてもアルフの耳には届かないと思い、別の話題を振ることにした。
「ところで、アルフはどうしてここにいるんだよ」
「ああ、それか。俺はほら、そこのねーちゃんとこれからデートって訳だ」
「なっ?」
「ほぅ?」
ジェネシスが感嘆の声を上げる。
「お前こういうのが好みなのか。メンクイだったんだな」
「ちがうわよっ!」
「だろだろ? 俺ってほら、顔いいから」
髪を掻き上げながら、にやつく。
「つーわけでカルマ、今日は先に寝てていいぞ。俺はこれからこちらのお嬢さんと二人っきりで、遅くなるからよ。キシシシ」
「ほほぉ?」
ちらりとオーディアをみるジェネシス。
「ち…ちょっとアンタ! なに言ってるのよ」
「なんだぁ? ホントのことだろうがよ?」
「言い方って物があるでしょう」
「二人っきりって…まぁ、人の好みですからいいですけど…」
そこにカルマも同意する。
「ああもうっ!違うって言ってるでしょう!」
拳を振り下ろして怒鳴りつけた。
「誰がこんなヤツとなんか」
「おいおい、何怒ってんだぁ? 俺は事実を言っただけだぜ?」
「誤解されるような言いかたしないでっていってるの!」
「あん? どんな誤解されるって?」
「う…それは…あたしと…アンタが…ごにょごにょ…」
「あ〜ん? なんだってぇ? きこえねぇよ?」
「いえるわけないでしょ!」
顔を真っ赤にしながら、オーディアは反論する。
とても口に出せることではない。それがわかっているからこそ、アルフレッドは聞いたのだ。
「いえねぇこと考えてたのか」
「くっ…」
「語るに落ちたか? キシシシシ」
「く〜〜〜〜〜〜!!」
だんっ!
「がっ!!」
口では勝てない悟ったのか、オーディアはアルフレッドの足を思い切り踏みつけた。続けて腕をつかむと、ずんずんと奥に引っ張っていく。
「バカなこと言ってないで、さっさと終わらせるわよ!」
「んなこというなって。俺はゆっくり楽しみてぇんだからよ」
「アンタなんか5分ともたないわよ」
「ほぉ、そりゃ相当な自信だな」
「最初からそういってるじゃないの」
「ま、何だっていいぜ。朝までたっぷり何度も楽しませてもらうからよ、キシシシシ」
だんっ!
「ぐあっ」
再び足を踏まれ、今度はぐりぐりとねじりまで入れられる。
「…この…」
「さっさと来なさい!」
腕ではなく、耳をひっぱらられ、アルフレッドはひょこひょことその後ろをついていく。
「オーディア、まて!」
と。ジェネシスが突然大声を張り上げた。さっきまでのちゃらけた様子から一変して、まるで別人のような雰囲気がサングラス越しでも十分に伝わってくる。
「なによ」
「オーディア…いいか、よく聞くんだ」
いきを1つ付いてから、続ける。
「ひと時の感情に身を任せてはダメだ。そういう時に限って、人生における取り返しのつかない失敗がついてくるものだ…」
「う、うるさいわね!そんな事判っているわよ!」
そういいかけた瞬間に、
「いやわかっていない!いいかよく聞け。基本に忠実に、冷静な自分になってこそ真の神の祝福が得られるんだ。ひと時の感情に決して女神は微笑まない。それを忘れるな」
ここまで真剣なジェネシスの姿は、今までそれなりの付き合いだと思っていたオーディアでも見たことがない。それだけに、ジェネシスの思いやる気持ちはいつになく心に響いた。
「あ…ありがと…」
「…よし。ではこれを持っていけ。今の気持ちを忘れない為にも、きっと訳に立つ」
その表情を見やって、ジェネシスは安堵の笑顔を浮かべつつ、財布から何かを取り出した。
次の瞬間、満面の笑顔を浮かべたジェネシスの顔にオーディアの正拳突きがめり込んだ。
憤激し、先ほどの闘志以上のものを確かに得たオーディア。
一人ボーゼンとするカルマ。
顔面に避妊用具を張り付けて、すでに物言わぬ物体と化しているジェネシス。
そしてその中を、オーディアに引きづられながら一人爆笑するアルフレッドの声が響いていた。