第1章 招待状の送り主 

第1節 招待状の送り主 第3戦目


ジェネシスの戦術は全て見せてもらった。
本当なら負けてしまってからわかっても遅すぎるのだが、そこであきらめてしまってはいつまでたっても先には進めない。
悪いところは悪い。直すべきところは直す。
わかっていても、意地になったカルマにそれが実行できたかどうか──。
とにもかくにも、二人はさらに予備の呪文書とメインの呪文書の呪符を入れ替えた。

カルマの入れ替えた呪符は──


シャッ
7枚の呪符を引き込み、カルマはゆっくりとその中身を確認する。
自分の呪文書も、相手の呪文書もその構成と動き方がわかっている。
もしかしたらジェネシスの呪文書にはまだ知らない数枚の呪符が、それも致命的なものが含まれているかも知れない。その可能性は十分にある。なにしろ呪符の入れ替えを行っているのだ。当然といえるだろう。
手札を眺めながら、今まで見た動きに沿って自分の取るべき行動を考えてみる。
もしもその思考の中ですら後れをとるようなら、この手札にも価値はない。
ジェネシスの速攻をしのぎきり、自らに活路を見いだせる手札でなければならなかった。

カルマ 手札7枚 ライフ20
無し
ジェネシス 手札7枚 ライフ20
無し

「古の盟約に従い、先攻で行きます」
そういいながら呪符を広げたカルマだが、ほんの数秒迷っていた。
「……死を育みし《塩の湿地》よ、我が下へ」
立った1枚の土地。しかし全てはここから始まる。
カルマの選んだ土地は…今はまだ光を失ったままだった。

カルマ 手札6枚 ライフ20
塩の湿地
ジェネシス 手札7枚 ライフ20
無し

「《森》よりいでよ、《ラノワールのエルフ》!」
自らの手番が来ると同時に、ジェネシスは見慣れたクリーチャーを呼び寄せていた。
その行動にためらいはない。既に決めていたのだろう。
「また出てきたよ…」
げんなりとしてため息をつく。
この対戦において、ジェネシスは3度とも最初に《ラノワールのエルフ》の召喚に成功している。
カルマの気持ちも、それがお門違いだとは言え、わからないわけでもなかった。
「そう毎度々々、最初に出さなくてもいいんじゃないか?」
「最初の手札にこいつがいない場合、よほどのことがない限り引き直すことにしてる」
ぽろりと出た不満に、だがジェネシスは冷静に返す。
それはそれだけこのエルフの強さを認めているということだった。

カルマ 手札6枚 ライフ20
塩の湿地
ジェネシス 手札6枚 ライフ20
 ラノ

確かに、エルフのもたらすマナ加速が緑の速攻を支えていることは事実だ。実際としてこのエルフが最初に召喚できるかどうかによって、緑の強さは驚くほどの違いを見せる。
対応できない数と受け止めきれない大きさのクリーチャーを連続で召喚して他を圧倒する緑の基本戦略の、その全ての根底を支えているのは実はこの小さなエルフ達なのだ。
だから…
「我、血をもって其に報いるものなり。<血の復讐>により、汝、求めたる其の重さをしれ」
このエルフ達を見逃すわけにはいかない。
カルマの腕から放たれた呪符がエルフの体を貫く。流れ出た血が呪符に吸い取られ、それと同時にカルマの体からも同量の生命力が失われていった。
だが、これでいい。失った生命力など何のことはない。最初に出てくるエルフを封じることで、緑の展開をぎりぎりまで遅らせることができるはず。
カルマはそう考えていた。
「やられたか…」
ジェネシスの落胆ぶりがその考えの正しさを証明しているようだった。

さらにもう一つの塩の湿地を支配下にくわえ、カルマは手番を終了させる。
またしても最初からはマナの出せない土地である。
カルマの手札にはこれ以外にもきちんとマナの出る土地があった。
だが、後の手番まで《塩の湿地》を置くことを先延ばしにし、重要になるだろうそのときに展開を送らせなければならなくなることを考えると、今、置くしかなかったのだ。
相手の手番でマナが無いのは「不安」だが、後の手番ではそれは明確な「危険」となる。

カルマ 手札5枚 ライフ19
塩の湿地 塩の湿地
ジェネシス 手札6枚 ライフ20

ジェネシスが新たな呪符を手に入れる。
それを手札に収めながら、ジェネシスは淡々と呪符を使っていく。
「光すらもたたえよ、《低木林地》。 敵を射抜け《エルフの射手》」
傍らに弓を持ったエルフが控える。
数あるクリーチャーの中から、素早く敵を射抜くこのエルフが選ばれているのは、やはりそれだけの力を持った存在だからだ。

カルマ 手札5枚 ライフ19
塩の湿地 塩の湿地
ジェネシス 手札5枚 ライフ20
低木林地 森 射手

「沼気よどむ《沼》よ我が下に」
呪符を引いた後、カルマは新たな土地を支配下に入れ、そこから引き出せるマナを全て引き出した。
「心まで凍らせよ、《冷たい亡霊》」
ジェネシスがクリーチャーを展開してくるなら、カルマもそれに抑える必要があった。この亡霊は《エルフの射手》には到底かなわないが、それでもその足を止める役には立つ。

カルマ 手札4枚 ライフ19
塩の湿地 塩の湿地 沼 亡霊
ジェネシス 手札5枚 ライフ20
低木林地 森 射手

「そんなクリーチャーがどこまで役に立つか、今までで十分わかってるだろ?」
エルフの射手が一歩前に出る。膝をついて弓をかまえて弦を引き絞ると、ためらい無く放った。
「くっ」
寸前でかわしたつもりだが、カルマの左腕に浅い裂傷が走っていた。
一筋の血が腕を伝わり、地面にその雫を垂らす。
『決闘』によってできた空間の中でお互いの呪符でできた傷や生命力の損失は、最後には元に戻る。痛みも押さえられている。しかしそれでも鈍い痛はカルマに生命力が削り取られていくのを感じさせていた。

「エルフを倒しておいたのは正解だよ。何しろ、そうでなければ前の手番でもう一体、呼び出せていたんだから。」
ふいにジェネシスがそんなことを言う。
……。
自ら手の内を明かす。それがどれだけの優位を相手に与えるのかわからないわけでは無いはずだ。それでもそんなことを言ってくるのは──
「ご明察」
カルマの思考を読んだのか、ジェネシスは自らの手札をさらけ出し、それと同時に呪符を使っていた。
「《土地譲渡》!」
《土地譲渡》──
手の中に土地が無い場合、それを証明するために手札をさらけ出すことによって、マナを使わずに使える、マナ不要呪文(ピッチスペル)のうちのひとつである。効果は、呪文書の中から《森》を1枚持ってきて手札にくわえるというただそれだけ。つまり《土地譲渡》=《森》だと言うことだ。
それなら最初から《森》を入れておけばいいだろうと言えるのだが、呪文書の中から《森》を抜き出すということはそれだけ呪文書の中の《森》──つまりは後半不要になる土地を引く可能性を低くする。逆に言えば土地以外の呪符を引く可能性を高める訳だ。
手の中を見られてしまうことが問題なのだが、見られても問題ない呪文書の構成をしておけばいいのである。呪符の欠点を欠点としない呪文書を構築することは重要なことであった。

カルマはジェネシスの手札を確認する。
確かに土地はない。だが見るべきはそんなことではない。
せっかく見せてくれている手札だ。その全てを覚えておくことは当然だ。
《クウィリーオンの歩哨》《リバーボア》《ラノワールの騎士》《野生の力》《絡みつく鉄線》…
そこに今、《森》が加わる。
場には《森》と《低木隣地》。
次からの呪符の流れが目に見えるようで、普通ならばありがたいところなのが、カルマはそれを喜ぶばかりか、逆にけわしい顔つきになる。
「(まったな…これは…)」
自分の手札と見比べて、心の中でつぶやいたそれは、偽りのないカルマの本心だった。

「《森》よ!新緑を芽吹かせよ!
 その手に純白を抱き、あらわれよ《クウィリーオンの歩哨》!」
歩哨から、光り輝くマナが放たれる。
「純白と新緑より導かれよ、漆黒を祓いし《ラノワールの騎士》よ!」
《ラノワールの騎士》──
侵略の時代。友好色2色のマナから生み出され、その両方の敵対色となる色に絶対的な防御力(プロテクション)を持つ小型クリーチャーが相次いで発見された。能力が有効でないときにはただの小型クリーチャーだが、その防御力が有効となる呪文書構成を相手にしたときは、とたんに主力の一角をになうことすらある。マナ効率も悪くはない。可もなく不可もなく、ただ、選択肢には常に数えられる。呪文書構築の段階から使い手を選ぶこれらのクリーチャー達は、そう考えると、対戦相手だけではなく、術者本人にとっても頭を悩ませるいやらしい存在といえた。
だが、今はこれ以上はない強力な戦力である。

「さて、お手並み拝見」
加速的にクリーチャーを揃え、ラノワールの騎士すらも支配下に置いたジェネシスに、果たしてカルマはその足を止めることができるのか──。

カルマ 手札4枚 ライフ17
塩の湿地 塩の湿地 沼 亡霊
ジェネシス 手札3枚 ライフ20
低木林地 森 森 射手 歩哨 ラノ騎士

(また、こんな状況まで追い込まれている…)
わずか数回の手番のうちに、場の状況は絶対敵に不利なものになっていた。
手札を見ても状況を一変させられそうなものは無かった。
「水の流れに浮かぶ《島》よ──」
ジェネシスの手には忌々しい蛇がにぎられている。使用するマナにしては力は十分。再生する能力も手伝って、攻防に活躍する、緑の小型クリーチャーのエースだ。さらに、島を支配下に入れている場合、その中を泳ぎ、術者に近づくことができるというもう一つの能力も手伝って、島を用いる青符術士──と言うよりは島を含む全ての呪文書を操る符術士──に対して忌み嫌われていた。
本来なら置きたくなかった土地を支配下にし、呪符も使わずにカルマは自分の手番を終了させる。
今はジェネシスの攻撃から身を守り、しのぎきることが必要だった。

カルマ 手札4枚 ライフ17
塩の湿地 塩の湿地 沼 島 亡霊
ジェネシス 手札3枚 ライフ20
低木林地 森 森 射手 歩哨 ラノ騎士

ジェネシスが呪符を引く。
場を見る。手札を見る。
行動決定に迷うとき、誰もが行う行動だ。
「少し時間をもらうよ」
「どうぞごゆっくり」
左腕の痛みも血の流れも無くなっていた。せかす必要はない。
ここは重要な場面だ。どう動くのか様々な選択肢がある。そのうちに正解と呼べる行動はどれか、勝ちに至る道筋は1つではなかったり、ときには全く存在しなかったりするのだが、それでも相手の手札を想定し、今ある自分の最高を目指す行為は、今回だけでは無い「次回につながる精神」として評価されるべきものだ。
何を持って最高と言うのか、『勝つ』ことだけに限定しても一言では言えないのだが…。

「(4枚に増えた手札。しかしその3枚は知られているぞ。さぁ、ここからどうする?)」
カルマの視線を感じたのか、ジェネシスは目を合わせてきた。だが、すぐに視線を手札と場に向けて思考の中に沈んでいった。
考えている間、ジェネシスは自分の爪を噛んでいた。そういえば先ほども考え事をするときには爪を噛んでいたような気がする。癖だろうか。

「待たせたね。どうも考えすぎたようだ」
くるりと首を回して力を抜く。
手札を片手で開き、1つ1つ確かめるように呪符を紡いでいった。
「《暴獣乗り》よ──」
知られていない4枚目。それを召喚しようとして、呪文詠唱を始める。
「……いいのか? これが出るとこちらの攻撃を受けきれなくなるんじゃないのか?」
その詠唱の途中でカルマの様子をうかがう。
つまり「打ち消さないのか?」といっているのである。
カルマにはジェネシスの手札はわかっていた。そしてやっかいなことにその手の中にはいやらしい蛇が眠っているのだ。
「……」
「……そうか。 ──獣の背に乗り今ここへ!」
ジェネシスのすぐそばに、もう一体クリーチャーが呼び出される。
一匹の獣と、それにまたがりながら乗りこなしているその男は、砂煙を上げながら獣の動きを押さえ込み、何とか鎮めることに成功する。

「それならこうだ」
手を振りかざし、攻撃を命じる。向かってきたのは《ラノワールの騎士》のみ。《クウィリーオンの歩哨》と《エルフの射手》はその場を動かない。
カルマの場には《冷たい亡霊》がいる。《暴獣乗り》の能力が使えればどうということはないのだが、今は呼び出したばかりで能力を使えない。それならむざむざとやられてしまうよりは、次の手番まで待つ方がいい。《射手》は、防御のためか。カルマに1マナを使わせるよりも、手札を守った方がいいと考えたのだろう。
そうしているうちにラノワールの騎士がカルマに迫る。《亡霊》はラノワールの騎士に近づくことすらできない。カルマの体にまた1つ裂傷ができた。

──野生の力は使わなかった。なら、この後にでてくるのは…。
受けた傷の痛みを意識の外に追いやり、カルマはジェネシスの行動を注視する。
リバーボア。青にとっていやらしいこの蛇がその手からこぼれ落ちるのを、カルマはじっと待っていた。
……が。
「終了」
「……なっ!?」
愕然とするカルマをよそに、ジェネシスはマナを残したまま自分の手番を終了を宣言する。
「これだけ状況が整えば十分。マナを残してかまえている相手の懐にわざわざ飛び込むことはない。終了だよ。」
暴獣乗りを見逃してしまったことをカルマは後悔した。

「蓄積した知識っ!」
本来は別のために使うはずだったマナを使い、カルマは呪文書から新しい1枚を引き込んだ。

カルマ 手札4枚 ライフ15
塩の湿地 塩の湿地 沼 島 亡霊
ジェネシス 手札3枚 ライフ20
低木林地 森 森 射手 歩哨 ラノ騎士 暴獣乗り

場の状況を整理する。
……。
どう見ても圧倒的に不利。一目見ただけで子供でもわかることだ。

暴獣乗りがいる今、冷たい亡霊の再生能力にはほとんど意味がない。それなら攻撃に行って手札を削り取ってやろう…と思ってもエルフの射手がそれを許さない。
スキが見つからない…。
だが、カルマはまだあきらめていなかった。
一縷の望みがあるとするなら…それは…。

カルマ 手札5枚 ライフ15
塩の湿地 塩の湿地 沼 島 亡霊
ジェネシス 手札3枚 ライフ20
低木林地 森 森 射手 歩哨 ラノ騎士 暴獣乗り

「まだ動かないのか?」
落ちかけたサングラスを直し、ジェネシスはあきれたように言った。
「それとも動けないのか? もしそうなら、そんなに重い呪文書じゃ苦労するぞ?」
そっちが早すぎるんだよ…。
といいたかったが、何を言っても敗者の戯言(たわごと)にすぎない。呪文書構成に間違いがあるとは思いたくなかったが、2戦を落とし、3戦目も絶体絶命の窮地に立たされているのは紛れもない事実なのだ
──だから言ったろ? その呪文書は弱ェってよ。

「攻撃」
《射手》《歩哨》《騎士》の3体がカルマに襲いかかる。暴獣乗りに後押しされたこれらを防ぎきる手段はカルマには無かった。
「来い!」
カルマは《亡霊》を後ろに下げ、その全てを自身で受けることを決める。
「いい覚悟だ。だけどね…暴獣乗り!」
報酬として《野生の力》が手からこぼれた。
パシイッ
ジェネシスの意図を理解し、暴獣乗りの鞭がしなり、地面を叩く。
襲いかかる3体のエルフがカルマに傷を負わせようとするその一瞬、本来なら踏み込んでこない半歩分を踏み込んで、その体に深い傷を負わせていく。
「もう場は煮詰まっている。この場を乗り切る解答を示さない限り、次で終わりだ。」
あくまで攻撃の手をゆるめない。

「終了…」
「渦巻く知識っ」
ジェネシスが手番を譲る一瞬。青を使うものにとっては唯一息のできる時間。
その隙を突いて、カルマは生き残る手段を探していた。
呪文書の中からまとめて3枚引く。ゆっくりと2枚をその上に戻す。
「……解決策は見つかったかい?」
声をかけてくるジェネシスを無視して、カルマはぼそりとつぶやいた。
「ええ、間に合いました。……運命の導き手よ──!」
それは全ての解決策を導く呪符だった。

「運命の導き手よ! 《吸血の教示者》よ! 我が血肉もて、力ある言葉を示して未来を開け!」
呪符にマナが注ぎ込まれ、力が解放される。
ザシュッ
手に持つ呪文書と、手そのものすらを一度に貫き、《吸血の教示者》はどろりと消えて無くなる。かわりに血塗られた呪符が一枚、カルマの目の前にゆらりと浮かび上がっていた。

「蓄積した知識」
目の前の呪符と、さらにはもう一枚を手に入れる。

一瞬の出来事。だが、カルマの手札はまさに一変していた。

カルマ 手札5枚 ライフ04
塩の湿地 塩の湿地 沼 島 亡霊
ジェネシス 手札3枚 ライフ20
低木林地 森 森 射手 歩哨 ラノ騎士 暴獣乗り

6枚の手札を抱え込み、カルマはホッと息をついた。
「なんとかなりそうかな?」
「ええ。おかげさまで」
予備の呪文書から呪符の入れ替えを行っているのだ。《吸血の教示者》がもたらす未来は、数少ないはずのそれらを確実に引き当てる。黒に教示者がある限り、常に致命的な一撃は覚悟しなければならない。
「沼気よどむ沼よ、我が下に」
支配した土地からもマナ引き出しながら、カルマは最後まであの言葉を思い出していた。

「あ〜くそっ どうするかなぁ…」
「あのよぉ、せっかくイイ呪符もってんだからよ。これも入れとけよ」
「……入れない」
「何でだよ。教示者使うときはよ、こういう色狙い打ちの呪符も効果的なんだゼ?」
「気に入らない。色が合わなかったらどうするんだよ。それに弱点つつくみたいじゃないか」
「ケッ。今更なに言ってやがる。黒と青はそういう色の組み合わせなんだよ。いいから入れとけ」
「あっこら! 勝手にいじるな! もうっ! …絶対入れないからな!」
「………」
「……」
「…」

だが、アルフレッドの助言は最後の最後まで正しさを証明し続けた。カルマにはそれが少し悔しかった…。
「躍動するあまたの生よ、絶望せよ。今ここに《非業の死》、おとずれん」
足下に黒い染みが広がっていく。次第に大きくなるそれは突如どろりとふくれあがり、触手のように伸びる。
ゾブッ──
そんな音がしたような気がした。
触手にからみつかれ、締め上げられ、貫かれたジェネシスのクリーチャーの全てが、瞬く間に力を失って地に倒れた。黒に対する絶対的な防御を誇るラノワールの騎士さえもその手から逃れることができなかった。
「やるね」
一言だけそういうと、あとはただじっと待つ。

「《冷たい亡霊》よ」
カルマが攻撃を命じると、ゆったりとした動きでジェネシスに襲いかかり、心までもはぎ取っていく。
手の中から《絡みつく鉄線》がこぼれ落ちた。
この状況まで来てしまえば、鉄線は逆にジェネシスの足を引っ張ってしまう。もう無用だ。

「ふぅ…」
ようやく一息つく。何とか乗り切った。あとは場に出てくるクリーチャーを除去しながら、ゆっくりと行けばいい。カルマは一瞬緊張をゆるめた。
「それで、終わりかい?」
ジェネシスの一言がカルマにひどく楽しげに聞こえた。まだもう1手あるぞ…そういうそぶりだ。そしてそれをカルマが見抜けるか楽しんでいる。
ここで手番を譲ってもいいのか? …いや、そんなはずはない。
「まだです──」
カルマは手札を眺める。

ジェネシスの手札は2枚。その片方はリバーボア。だがもう片方は?
クリーチャーなら何とかなる。そういう手札だ。だがそうじゃなかったとしたら?
ここでやられて困ることは一体なんだ? 
わからないなら覗いてみればいい。使われて困るなら、取り除いてやればいいのだ。
「汝、《頭の混乱》 を覚えるがいい!」
「OK。 来いっ!」
楽しんでいる。2枚の呪符を片手ずつに浮かべ、前に差し出してきた。
「色は?」
「色は……みど……くそっ」
どうも頭に引っかかる。

「…白だっ!」
「白だな?」
「……そうだよ。」
呪符を作るのも自分、そして使うのも自分だ。ならば最後は自分の勘を信じることにする。
「……本当に?」
「……変えないよ」
意地になっていた。
「……」
「……」

「正解」
2枚の呪符がめくられる。そこに映し出された白い呪符。第7の呪文集に採録になら無かったそれは、白の極大呪文《ハルマゲドン》だった。

そのあとの展開はゆっくりとしたものだった。場に出てしまったリバーボアを手札に押し戻し、冷たい亡霊がそれを削り取る。潜伏工作員のローブを纏い、通常よりも多くの呪符を引き込んだカルマに場を支配されると、ジェネシスは空になった手を広げて投了を宣言した。

カルマ 手札3枚 ライフ04
塩の湿地 塩の湿地 沼 沼 島 亡霊
ジェネシス 手札1枚 ライフ20
低木林地 森 

 

 


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